2024.04.06.土 100年先を描いた「森の予想図」

近くの森と向き合い自問自答する育暮家。

大井川の森の木で家を建てる育暮家はいほーむすは

持続可能な森づくりに心を寄せています。

戦後の大造林から約70年、近くの山には杉、ヒノキの人工林が

広がっています。

人の手で育てた杉、ヒノキは大切な家づくりの素材なのですが

大きな課題も背負っています。

 

単一樹種の人工林は森の生態系に於いて不自然で、脆弱だと言われます。

持続性についても懸念が出てしまいます。

そしてその伐採方法、伐採後のあり方にもさまざまな意見があり、

日々の取り組みの中で私たちのスタンス(正解を求めようとする)にジレンマを抱えることもあります。

近くの森と向き合い自問自答する育暮家。

その今を「育暮家のジレンマ」と題して動画にまとめたいと思っています。

6月末ごろまでに何とか、と思います。

 

森の生態系を育む大都会の中の森を体感できる場所

3月初め、かねてから寄ってみたいと思っていた

神宮の森(内苑)に足を運んでみました。

目的地、明治神宮は若者の町、原宿のとなりです。

そこに持続する森、恒続の森があるのです。

その面積は70ha。

 

100年、200年後を描いてつくられた森の生態系を育む大都会の中の森を体感できる場所なのです。

グーグルマップ

 

神宮の森は大正時代、明治天皇崩御に伴い明治神宮創建が始まり

設計計画が起こされ森づくりが始まりました。

人の手をほとんどかけずに自然に任せています。

持続する森を目指して

100年150年後を描いた有名な「森の予想図」があります。

明治神宮の森: 林学者や造園家によるナショナルプロジェクト | nippon.com

 

その予想図には森が成長する過程を分かりやすく図、イラストにしてあります。

最初は樹種も高さも様々な木を植え、自然に任せる。

年月を経て木々の天然更新が進み、多様性に富む自然森が誕生するというものです。

 

自然な森の生態系を学ぶ入り口

未来の森の設計を手掛けたのは、ドイツでも森林学を学び多くの造園などを手掛けた

本多静六さんやそのお弟子さんたちです。

森林についての勉強会では幾度となく聞くお名前とお話です。

 

そこに立てば計画そして造森作業から100年を過ぎ、

その構想、計画が間違っていなかったことが目で見る形で確認できます。

「森の未来予想図」に描かれた通りに森が成長し、今に至っている事実がそこにあります。

このことは、森に詳しくない私たちにも分かりやすく伝わり、

自然な森の生態系を学ぶ入り口になります。

 

原宿駅で電車を降り、にぎやかな通りの反対側に歩けば直ぐに大きな鳥居が見えてきます。

鳥居をくぐれば参道の左右、正面に広葉樹を中心とした森が広がります。

これが、話に出てくる多様性のある恒続の森か~。

本殿を目指す人、そこから引き上げる人が行き交います。

喫煙は厳禁です。

そこは神聖な場所であると共に火災で社殿や森を消失させてはならないからです。

 

私は地表、そして木々の幹、枝葉、topへと眼とスマホカメラを向けていきました。

土壌の豊かさが森の健全性を表すと教えてもらっています。

土壌の中に住む70億の微生物の活動がCO2を固定するいう自然の仕組み。

枯葉や枯れ枝、倒木には「保水」で森の乾燥を防ぎ、

様々な菌で分解され腐葉土となり栄養を生みだす役目があります。

その為倒れた木は大雨で流木になる恐れがなければそのまま放置します。

こうして森の持続性が保たれます。

 

神宮の森でも同じでした。

木の一生はそれぞれの木によって異なります。

神宮の森の木は稚木、大人の木、高齢の木、バラバラです。

だから枯れる時期もバラバラです。

そのことで一度に木が消えてしまうこともなく自然の循環を保ちます。

 

大井川の森には、杉桧の人工林がたくさんあります。

杉、ヒノキの寿命は長く、数百年生きます。

住宅の骨組みに使う場合は40~100歳ぐらいが使い勝手のいい樹齢です。

長生きの木なのですが、木生途中で「ごめんなさい」と伐採されます。

 

皆伐とCO2の関係はよく知りませんでした。

同じ時期、広範囲に植えられた木は同じ時期に伐採されるのが一般的です。

効率を優先すれば勢い、広範囲を伐採、皆伐することにもなります。

すると大きな面積がはげ山になって問題が発生します。

 

例えば、土壌の中の微生物とCO2の関係です。

私たちのジレンマとして皆伐に対しての整理の仕方があります。

皆伐と洪水の関係はよく話題になります。

ですが、皆伐とCO2の関係はよく知りませんでした。

最近、微生物の活動によってCO2が土壌に固定されることが分ってきているようです。

皆伐させると木で覆われていた土壌が太陽にさらされ、一気に高熱にさらされることもあります。

すると、長い年月をかけて培った豊かな土壌の中で暮らす微生物の活動が弱まり

CO2の固定を妨げられるとのことです。

 

近年、森林のCO2吸収が言われ森林クレジットも注目されます。

光合成からCO2吸収、そして土壌でのCO2固定、

その2つから森林とCO2の関係を理解する必要があります。

 

100年200年先を描いてつくられた神宮の森に触れて思いました。

果たして100年先の大井川の森はどんな姿になっているだろうか。

 

100年先の大井川の森を描くには

山側、川上、川下、個人や産業界、行政様々な関係者の共創が不可欠です。

折りに触れて森に行き、山側の方、つくり手の私たち、

木の家に住む方たち、そして森や木に関心がある無しに関わらず多くの方と

森や木について言葉を交わすことがとても大事になってきたと思います。

ほとんどの日本人は森の近くに住んでいる、から・・

 

 

 

 

 

 

 

お時間あるときにクリックしてアルバムを開いて見て下さい。

著書「多様性〜人と森のサスティナブルな関係」池田憲昭(2021年春)

2024/04/06/土 10:27 pm Category:育暮家コーチ杉のfoot-path