育暮家の通風トレーニング
ウインドキャッチャーを考える
ある年の初夏、こんなお電話を頂きました
お知り合いの大工さんが建てた家
2階の平面図です。
1天井の断熱改修を行う
2ホール吹き抜けの窓FIXを開閉できるようにする
3寝室天井を開口して東側ケラバに髙窓をつける
4北側トイレ前の窓を大きくする
暮らし上のアドバイス
寝室の日射遮蔽と通風
1F キッチンからの生活熱の工夫
玄関ドアからの通風確保 等
A案 | セルロースファイバー吹き込み 厚さ200mm 熱抵抗値 5.18 |
¥450,840 |
---|---|---|
B案 | グラスウール 厚さ155mm 熱抵抗値 4.1 |
¥210,600 |
C案 | 屋根面に断熱材施工 グラスウール16k 厚さ155mm 合わせて小屋裏妻壁面にグラスウール施工16k 厚さ105mm |
¥470,500 |
※小屋裏換気用に換気扇250Φをつける | ¥130,200 |
※小屋裏の旧断熱材処分は含みません
A、B案はダウンライトが断熱材対応でない場合はダウンライトの取替が必要です
寒さ対策には間仕切りの気流止めもやった方がいいかと思います
ご提案の結果、
天井断熱補強のB案をお選びいただきました。
冬の断熱効果にも期待いただきました。
天井断熱改修のみで終わった。…が、
結果考察をしてみました。
①天井上に施工した断熱なので小屋裏の温度は変わりません。
②外気温と室温は連動して推移しています。
③寝室の室温は午前中は外気温と連動し上昇し、外気温が上昇を続けても一定のところでその連動は止まります。
④外気温が下がり出すと室温も下がっていくがそのスピードはかなり遅いです。
⑤天井断熱補強後は④の室温低下のスピードは若干速くなっています。そのことから、断熱によって室温低下時に小屋裏温度の影響を和らげる効果が確認できます。
⑥室温上昇は小屋裏の影響を受けて上昇するより、窓壁からの日射熱取得と生活温度の影響を受けていることが推測できます。
⑦1階のキッチンからの生活熱が階段吹き抜けを通して2階に上がってくる状況があり室温を上げる要因にもなっています。
⑧明け方、外気温、小屋裏温が下がっても室温が連動してないのは排熱に課題があることがわかります。
冬の暖房対策にはなったけれど
寝室の夏の暑さ対策にはもうひと工夫[合わせワザ]が必要なようです。
つまり、通風改善をすればもう少し室温を下げられる。····の思いが残りました。
そこで思ったこと。
低コストで通風改善出来る方法はないか?
ウインドキャッチャーのご提案です。
捕まえようと工夫してきた。例えば
新築なら窓形状も取りつける場所も選べる
たて滑り窓など対応商品も揃っている。
リフォームでの通風改善を求められる時代。
考えるなら
改修用ウインドキャッチャーがいい。
北側の部屋では窓が小さい、少ない場合が多い。
こんな場所こそウインドキャッチャー効果は
大きいのでは?··
どんな窓につければ効果的?
どんな形状の窓が多い?
どこにつければ?
まずは思いのまま、
今まででの試作を踏まえてウインドキャッチャーの仕切りを作ってみた。
つけてみた。
新築途中の家にお願いしてつけさせていただいた。
相手の窓はウインドキャッチャー向きでなかったが見た目も効果もまずまず。
タイプは二つ
新築・リフォーム双方に対応可能を意識して
視界を遮らない、粘りのある 加工しやすい アクリル素材を選択 |
接合部分は薄くても 強度のあるステンレス板で |
そうこうしていると
南雄三さんが
通風トレーニングという
本を出されました。
そのなかにウインドキャッチャーのページがある。
とても参考になりました。
そもそもこの本は本の題名の通り 通風についていろいろ考えてみるつまり
通風をトレー二ングをサポートする為の本なのだ。
と私たちは解釈しました。
それではと
3/4サイズの部屋を作り
ウインドキャッチャーを通風トレーニングすることに。
風速 1m/s
2m/s
北側(北東、北西)の部屋を想定
天井高 2400
8畳間 3.6×3.6m
引き違い窓 1609
送風機:三菱電機 DF-40ESC 3台
計測器:クリモマスター風速計
(カノマックス 6531)
1、単純にウインドキャッチャーの効果
2、開口部(風の入口・出口)とウインドキャッチャーの位置との関係
3、ウインドキャッチャーの出幅と効果
4、理想とした引き違い窓とウインドキャッチャーの相性
5、ウインドキャッチャーで捕まえた風は部屋のどこを流れるか
6、すだれを垂らしたらどうなる
気持ちいい風0.5m/sで受けるように送風機を回したが
計測には弱すぎたので
1m/sと2m/sでウインドキャッチャーが風を受けるようにした。
吹き流しの角度と風速の目安
実験方法
3台の送風機
風速計
開口部に取付けたウィンドキャッチャー
室内の空気の動きを観察するリボン
通風トレーニングした
ウインドキャッチャーと窓配置パターンリスト①
通風トレーニングした
ウインドキャッチャーと窓配置パターンリスト②
(サッシメーカー推奨パターン)
※通常、窓から捉える風速は0.5m/sが良さそう?
出口の風速も計測しましたが外部の影響もあり参考値と捉えた。
それでも風の入口出口の位置関係が通気量に影響することがわかった。
ウィンドキャッチャー出幅の違いによる導入空気量の差は、あまり無かったが 後日の試験において送風条件の違いからか、W400の方が大きく上回る傾向が見られた。
ウィンドキャッチャーの出幅は通気量だけでなく、アルミ庇との関係や耐風圧強度、デザイン性等から判断すべきものと考える。
実験から見えてきたもの
・ ウィンドキャッチャーを取付けた方が 室内への導風効果は上がる。
・ 開口部を対角に配置すると室内全体の空気を動かす事ができる。
・ 給気口と排気口の距離が短いと通気量は多いが 局所的にしか空気
が動かない。注)開口部内の計測器の位置で数値が大きく異なる
・ 一つの開口の中でも入る空気の流れと出る空気の流れが有り、かなり
複雑な動きをしている。
・ 給気口近傍に内壁が有る方が 無い場合よりも通気量が多い。
空気は壁等に沿って流れるようだ。
・ ウィンドキャッチャーと簾を組み合わせると通気量が若干増える。
(風向きによる)
開口部周辺の複雑な空気の動き
(リボンの動きを観察)
ウィンドキャッチャー構成部品
アルミ庇とSUS固定板(上)
SUS固定板(下)とブラケット
アルミ庇の取付
ウィンドキャッチャー上部
ウィンドキャッチャー·
ブラケット取付
既存庇及び現場施工の庇にウィンドキャッチャーを取付けるための金物を用意。
ウィンドキャッチ板は、室内からの眺望に影響させないように透明アクリル板を採用。
寸法は幅200mmと230mmを
設定しており、サッシとの納まりに応じて選択する。
高さ寸法については、開口高さに合わせて対応する。
玄関吹き抜け部のはめ殺し窓を開閉可能な窓に
改修することに手を付けました。
それから。
寝室へのウインドキャッチャー施工です。
カバー工法で断熱性を高めたオー二ングサッシに施工。
高窓なので手動オペレーターで開閉して頂くことに
とは言え、日本人は風をうまく活かす知恵を持っていた。
だか ら、育暮家は
ひとつでも風を活かす暮らしと住まいを増やしていきたい。
温暖で日射量の多い静岡の高気密高断熱の家は
通風で換気回数を多くし涼しく暮らすのが良い
と思うし····
特に夜間はね。
昼と夜間では風の向きも違うので窓の高さも位置もちょっと工夫を。
ヒートアイランド化する街中の密集地と
放射冷却が起きやすい田舎の家とは通風に対する考えを
変えなくてはいけないしね。
ウインドキャッチャーで風の流れをコントロールして
箪笥の裏に風を回してカビ対策も?····
育暮家の通風トレーニング
お付き合いありがとうございました。
改善点はまだまだ限りなくあります。
風は温度差で発生するんだよね(南雄三さん)。
風を受けるだけでなく風をつくりだす工夫もこれからです。
みなさまの熱いアドバイスを頂きたくお願い申し上げます。