2024.04.20.土 自分の家の素材に触れる

 

家づくりの効率化、工業化が進む中で失いたくないこと。

このところ現場に配送される既製品部材によって現場を進める工務店が増えているような気がします。

現場に段ボールなどの梱包材が山になる光景が浮かびます。

これはあらかじめ工場で作られた製品を現場で組み立てるという作業工程です。

プレハブメーカーさんであれば当たり前のことですが、

これまで素材加工から行っていた地域工務店の新たな選択です。

今このように素材からつくる家づくりが大きく変化しようとしています。

 

この流れの大きな理由に、職人さん不足と生産性向上という目標があるのではないでしょうか。

 

家の素材と言えば、森林大国日本ではなんといっても木材です。

その地域素材を地域の職人さんたちの手によって

骨組み、内外装、建具、家具などに加工、製品化してきました。

 

家への愛着が増してきたころ、施工した職人さんを思い出してくれる

魅力あふれる手わざは職人さんあってのものです。

ところがその職人さん達の高齢化や後継者不足の中で、現場作業を減らす

素材の工業製品化はやむを得ない状況になってきました。

ただ、残念なのは素材の魅力や職人さんを顧みず、便利だから楽だからで

工業製品を多用する家づくりが増えていくことです。

 

そんな中、育暮家はこの大切な地域の素材を自分たちの目の届くところで生かしていきたいと思っています。

職人さんたちに腕を振るってもらいたいのです。

そして、住まい手さんには家づくりの過程に出来る限り触れていただきたいと願っています。

 

10年20年経ってよく言われます。

「○○さん元気?」

○○さんとはその方の家に携わった職人さんの名前です。

家への愛着が増してきたころ、施工した職人さんを思い出してくれるのですね。

 

住まい手さんにご自分の家の素材とふるさとの大井川の森や製材所に触れて頂くこと

さて、現在基礎工事が進んでいます藤枝市の岡部では建て替えリフォーム(新築)

のお話を少しさせて頂きます。

来月にそちらの育暮家の家づくり「私の小さな森の家」が上棟します。

基礎工事と同時に大井川の森の木の骨組み加工が進んでいます。

現場スタッフから「製材所でお客さまに素材を見てもらいましょう」と声が掛かりました。

 

すまい手さんにご自分の家の素材とふるさとの大井川の森や製材所に触れて頂くことは

地域工務店として育暮家が大事にしていることです。

「いかがですか」と声をかけさせていただくと「行きたいです」と期待通りのお返事です。

早速、日程調整し島田市金谷の落合製材さんに出かけました。

 

 

初めての体験だと思う中、どんなアクションをされるか楽しみ

落合製材所さんには大井川流域から切り出された木材、杉、ヒノキが並んでいます。

これから建前となるわが家の素材とのご対面です。

丸太の状態の木がどこからきて、どのように製材されどこにどのように使われていくのか?

初めての体験だと思う中、どんなアクションされるか楽しみですが

製材所の皆さんと一緒に場内を案内しました。

最初は製材された木材が置かれている倉庫へ。

 

「この香りの中で仕事するってそれは贅沢なことですね!!」

倉庫の中には製材された梁や柱や土台などの構造材と造作材が積まれています。

自然乾燥や機械乾燥中の半製品です。

 

住まい手さんからの第一声は

「すごく木の香りがする、いい香り!」

すまい手の皆さんはフレッシュな木の香りに感動されます。

私たちは日々現場で木に接するなかで鼻が慣れてしまって殆ど木の香りを感じませんが

「この香りの中で仕事するってそれは贅沢なことですね!!」

と、羨ましがられたこともありました。

 

森の中で土壌から水を吸い上げながら立っているスギやヒノキの含水率は300%もあるとのことでした。

水分たっぷりの木を伐採して家の素材とする為には、乾燥が必要です。

乾燥方法にはいくつかの方法があります。

伐採後山で葉をつけたまましばらく放置しておく、葉がらし乾燥。

必要寸法より少し大きめに製材して、しばらく自然に任せて乾燥させその後再製剤する方法。

そして様々な方法での機械乾燥などがあります。

木によって乾燥度合いが異なり、ヒノキはほぼ均一に乾燥が進むようですが、

スギは乾燥過程でのバラつきが大きく乾燥方法に工夫が必要とされるようです。

この保管倉庫は乾燥管理の役目を担っています。

 

次に丸太を製材する場所へ。

 

ここでは帯鋸という帯状の鋸を使って丸太を引いていく作業を見学しました。

落合製材さんは静岡県が認定する優良木材を製材して提供しています。

静岡県優良木材に指定されるためにはその基準を満たさなければなりません。

粘り強さ(ヤング係数)の強度や乾燥(含水率)の基準です。

製材された木材はノギスで寸法チェック、含水率は構造材は含水率20%未満、造作材は15%未満という

規定をクリアしているかを計測をし品質管理がされています。

 

現場に寄り添う家づくりは

効率化や工業化にはない人に寄り添う家づくり

持続可能な家づくりは私たちの大きなテーマですが

森林と木材活用の関係の一端を製材所で確認していただきました。

製材所の中を一回りして、住まい手さんのにこやかの表情にほっとし、うれしくもありました。

 

つくり手と住まい手さんがものづくりの原点から意見交換し協働、協力しながら進める家づくり。

今後は難しくなることも変化もあるかもしれませんが、現場に寄り添う家づくりは

効率化や工業化にはない人に寄り添う家づくりだと信じています。

 

次は恒例の植林体験会にお招きしたいと思います。

5月に開催予定です。

ますます建前が楽しみになりましたね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2024/04/20/土 03:40 am Category:新社長の It's fineday