2016.07.25.月 車いすの建築士
「木の家と太陽と車いす」と言う本が出版されました。
名古屋で100年の歴史を刻む阿部建設の社長、阿部一雄さんが野辺公一さん(㈱オプコード所長)のプロデュースのもと書きあげた本です。
昨日はその出版記念パーティーにお招きいただきました。実は著書には育暮家はいほーむが阿部さんのアドバイスを受けながらリフォームさせていただいた「庵原の家」のことが紹介されているのです。その関係でお招きに預かったのです。
阿部さんはバイクの事故で脊髄を痛め、車いすになってしまったのですが、身体的、精神的な苦難を乗り越え、持ち前の前向き思考から車いすの建築士兼社長として活躍されています。車いすの阿部さんとはomソーラーの関係で親しくさせていただいています。同様な障害にを背負ってしまった方の「庵原の家」のリフォームに際しては、すまい手さんへの精神的、病理学的な事、暮らし方などとあわせて、私達には建築的アドバイスや示唆をいただきました。
脊髄損傷による身体のハンデキャップや楽しさなどについては聞いてみて驚かされるばかり。歩けないこと、家族、車いす生活のこと、中でも障害をもち自立していくためになにが大切なのか、また住まいについてどう考えるべきかは衝撃を受けながら学びました。そして、それは私の大切な経験となり財産になりました。なにより感謝するのはそんな障害者の住宅に未熟な私を信じてリフォームを任せてくれた「庵原の家」の家のご家族の方々です。「庵原の家」の体験を14ぺージに渡り書かれています。
改めて当時のやり取りを思いおこしています。
講談社から有賀リエさんの「パーフェクトワールド」とタイトルされた女性向けの漫画本(ラブストーリー)が出版されていて人気のようです。その有賀さんも見えていました。車いすの建築士が主人公で阿部さんがモデルになっているようです。漫画の中の障害を持った主人公がよりリアルに描かれているのは「阿部さんのおかげです」と話されていました。外からは見えてこない障害者の苦悩と夢・希望を繋いでいくストーリーです。
帰りに三省堂書店によって介護コーナーの棚を見ていたらそこに阿部さんの著書が置かれていました。「介護コーナー」か・・・・
“車いす”・・・から連想することは「介護」なのか、そうかもしれないな。でも、きっとどのコナーに置こうか悩まれたと思います。ひょっとしたらあちらこちらに置いてあるかも知れませんね。
オリンピックとパラリンピックが近づき、躍動的な障害者の姿を早く見たいと思われている方も多いと思います。アスリートまで上りつめる人もいれば一方、予期せぬ障害に「自立する」というハードルを前にして悩まれている障害者の方の存在も忘れてはならないと思います。「庵原の家」のリフォームの目標は「如何に自立できる生活を実現するか」にありました。それは単に建築的に備えるだけでは実現できないことを教わり、なにより「心」のバリアを理解することが大切であるか、私がその「心」のバリアを受け止めるためには阿部さんの力が必要でした。
今迎えている高齢化社会、私たちは住まいづくりに於いてなにをよりどころに設計したらよいのか。40.50.60代から描くライフスタイルを支えるにはなにが必要なのか。介護の課題が大きくなる中、そこには「自立した暮らしを維持する」の意味、意識をつくり手、住まい手で共有されることがことが求められています。「庵原の家」のリフォームは車いす生活のディテールづくりとつくり手の意識改革を阿部さんから指南されたのだと振り返ります。
障害者、高齢者の住まいを考えるとき、手すりや段差改修などのバリフリーはもちろんですが阿部さんが言う「心のバリアフリー」を理解することで「自立した暮らしを維持する」生活(住まい)を実現できると確信します。
工務店が障碍者の暮らしや住まいを考えるとき、阿部さんのような相談者がいてくれることで、迷いや勘違い、そして家族のなかの「遠慮」というバリアにまで気配り、配慮できるようになります。阿部さんの著書を手にとり改めて感謝申し上げます。
2016/07/25/月 11:15 am Category:育暮家コーチ杉のfoot-path