2020.12.26.土 アメリカの最新住宅建築事情を聞いて・・

数日前、北米の最近の住宅建築の様子をIBMF代表理事鮫島修二さんから聞かせていただく機会がありました。

実はヨーロッパの住宅の省エネなどの状況について学ぶ機会が多いのですが

アメリカについては、大型の住宅だし、エネルギーは大量消費だし・・なんてイメージがあって

あまり関心はありませんでした。

 

でも、今回短い時間でしたがとても興味深いお話を伺うことができました。

その中で、高齢化・熟練工不足・省エネ、

この3つが北米の住宅産業の課題だと上げていました。

これは私たちが抱える課題と同じであったことに興味がわいてきますね。

 

1つ目は高齢化の事。

日本は少子高齢化が進む中、人口そして世帯数が減っていますね。

アメリカの人口は2憶台で日本の2倍強ぐらいかと思っていました(かなり古い感覚かな)が、今は約3.3憶人で日本の3倍だそうです。

そして増え続けているとのこと。

世界経済のネタ帳というHPを見ると https://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=LP&c1=US&c2=JP

確かに。

では、アメリカの高齢者の数は・・・

2030年には2割の人が65歳以上になると言います。

3憶人×20%として6000万人。

高齢者の9割の人が最後まで住んでる家に住み続けたいと考えているそうです。

日本人もそうですね。

 

イギリスでは高齢になると住んでる家を売って施設に入るのが当たり前になっているとか聞いていたので

これは意外というか、良かったというか複雑です。

そんな中、祖父母や成人した子供との同居が増えているとのこと。

離れを作ったり増築でスペースを拡張する家が目立ってきているようです。

 

日本は先駆けて高齢化を経験し、その対応が世界に注目?されていますが、高齢期の住まいの在り方は

国によってかなり違いがあるように思います。

これは古くからある住まいの価値観ではなく、新たな時代の住宅観、人生観だと思います。

高齢化先進国は高齢化社会のモデルにされますが、各国の話を聞けば

文化や価値観、社会保障、国土計画、社会保障も実に様々なので、

日本モデルは世界の参考にはならないように思います。

 

こんなお話もありました。

住宅ストックの比較  日本ー6200万戸(持ち家3100万戸) アメリカー13000万戸(持家7400万戸)

 新築着工件数        日本ー90万戸  アメリカー160万戸   

 新築と中古流通の割合    日本ー87:13    アメリカー20:80   

 

日本は多くの住宅ストックを抱えていますが

戦前の家制度から解放されたあと、戦後の70年間に住文化やライフスタイル、住宅施策などの変化の中で行き場を失っていく家が増えています。

スクラップ&ビルドの家づくりは反省されましたが

家余りが顕著になる中、本当に日本のストック住宅をどのようにつないでいくかが大きな課題だと思います。

高齢者が住み支える形に見える住宅ストックに

改めて如何にユニバーサルデザインを住いに取り込むかも課題です。

紹介されたアメリカの住宅建築事例としてユニバーサルデザインの強化がありました。

ストック住宅を扱う工務店に求められるスキルの領域ははますます拡大し、

学びの場、学ぶ時間をいかに確保するかも大事になっていくと感じました。

 

アメリカの既存住宅市場についても説明されていました。

それは約163兆円、これは日本の23倍にあたります。

また、2050年にあってその2/3は現役だろうというのです。

その数字を支えているのは、リフォーム、リノベーションで価値を上げることが当たり前で

社会的に資産評価される環境が整っているからですね。

 

2つ目の課題は、熟練工不足です。

これはドイツに行った時も感じました。

職人さんがこなくて何日も作業が進まない現場が多いと聞きました。

分譲地の工事途中の現場を見たときも職人さん姿をあまり見かけませんでした。

 

日本も職人さん不足は深刻になっていきます。

10代の大工さんは2000人しかいないとか。

高齢化と後継者がいないという状況は同じです。

Building Kuowledge

アメリカでは解決策として大きく2つ進めているようです。

❶ 教育  - 若者に魅力ある職業として伝える

❷ 製品開発  - 熟練職人に頼らなくてもできる作業

 

育暮家でも「家づくりに魅力があることが大事だよね」としています。

誇りを持てる職業、これはどんな職業でも同じ。

人の為、社会の為、そして自分と家族の為。

お客様からの「ありがとう」の言葉はとてもうれしいです。

その言葉がどれだけ職人さんを元気にさせてくれるかを痛感しているからです。

自然災害が増える中、公助に頼れないことが増えています。

自助でも限界があります。やはり身近な工務店、職人さんが力になります。

手に職を携えた職人さんを世界規模で増やしていくこともSDGsにつながり

世界的テーマだと思いました。

 

3つ目は、省エネ

アメリカのストック住宅の性能はまだまだのようです。

1973年のオイルショック前の省エネ性能の低い住宅が既存住宅の半分近くあるとのことです。

この住宅の質の改善、特に省エネ性能の向上が全エネルギーの2割を占める住まいでの

消費エネルギーを減らすことになるので、これから力を入れていくポイントになるようです。

日本では既存住宅の90割が性能不足とされています。

 

確かに、断熱でいえば平成28年度基準が出来て本格的な暖熱性能向上に向かう

土台ができたというところで、2021年が日本の住まいの暖熱化元年と言っても

過言ではないと思います。

育暮家がつくってきた家も暖かさを求めてきましたが、性能はまだ不十分と言わざるを終えません。

OBさんの住まいにも目を向けて頑張っていかなくてはと思います。

 

アメリカの1億3000万戸の既存住宅の省エネ改修は大規模な事業として期待されているようです。

その中で面白かったのは、アメリカの大きな家はセントラル空調が主流ですが、

これが日本のヒートポンプエアコンが、必要な場所だけの冷暖房が出来て無駄がないとされ

普及しだしているようです。

セントラル空調からソーン空調へとですね。

また、給湯なども同じくセントラルを、日本のガス給湯器にかえる家も増えているとか。

そういえばパロマがアメリカで頑張っているよと聞きました。

検索すると http://www.juseikatsu-digital.com/column/?id=1538624853-488378

 

大きな家まるごとより場所ごとへの給湯は無駄がないということで、大量のお湯をストックすることから

瞬間で沸かせる日本のガス給湯器を複数つけたりするシステムに注目が集まっているのですね。

頷けます。

ライフスタイルの変化が少しづつ変わり、「キッチンダイニングリビング」

所謂LDKスタイルが増えているようだとか。

設備も暮しもコンパクトに整えそして暮らす、これは大きな流れですね。

 

更にEPS⇒エネルギーパーフェクトスコア やパッシブサベリアビリティーなどの言葉に

自然との共生や省エネ改修へ向けての基本的考え方が見えてきました。

 

久々に最近のアメリカの住宅事情を伺い、とても新鮮な気持ちにさせられました。

コロナ後の世界は大きく変わっていくかと思います。

高齢化が進む中、身近な住まいのエネルギーを如何に無理なく減らしていくか

2021年育暮家の取り組みに弾みがつくお話を聞き、みんなと共有していきたいと思います。

 

小さな工務店同士が地域を超え手を繋いで、情報や知識、そして人を交換し未来に進んでいきたいと思います。

育暮家の2021年のキーワードは「未来」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

2020/12/26/土 01:57 pm Category:育暮家コーチ杉のfoot-path