2017.07.09.日 本質改善型リフォームは新築より難しい

連載コラム 21世紀の住まい 第10回 野池政宏

本質改善型リフォームは新築より難しい

新築は一から(白紙の状態から)その建物を考えていくことができます。一方、リフォームは「いまの建物」の状態に大きく規定されます。「いまの建物」は本当に千差万別で、同じ木造であっても「伝統的な工法」「一般的な木造軸組み工法」「ツーバイフォー工法」があり、同じ「一般的な木造軸組み」で建てられた建物であっても、骨組みのつくり方が違っていたり、耐震性が違っていたりします。もちろん、シロアリの被害や雨漏りによる建物の劣化の状況も様々ですし、断熱性能も様々です。

前回ご紹介した「部品交換型リフォーム」であれば、そもそもこうした状態を改善しようとする発想ではないので「いまの建物」の状態にあまり規定されないのですが、「本質改善型リフォーム」をしようとすれば、当然ながらその内容は「いまの建物」の状態に大きく規定されます。つまり、適切な「本質改善型リフォーム」を行おうとすれば、まずは「いまの建物」の状態を調査し、分析し、そこからリフォームの内容を考えていくという手順になります。そこでは、千差万別である「いまの建物」に対する調査力や分析力が必要になり、新築を建てるよりも「本質改善型リフォーム」のほうが、幅が広く、しかも本質的で深い知識、理解、技術が必要になります。

(図で描くと、こんな感じです)。

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建物の3大基本性能

本質改善型リフォームとはどういうものかを理解していただくために、建物(住宅)に求められるものを少し詳しく整理します。

そこでまず考えるべきは「構造性能」「温熱環境(暖涼)性能」「劣化対策性能」であり、これが建物の3大基本性能です。「構造」は、長期にわたって建物に働く力に耐え、建物の形を保持するために必要な性能です。もちろん、建物に働く力の中には地震や強風があり、それぞれに耐える性能を耐震性能、耐風性能と呼びます。

温熱環境(暖涼)性能は、「冬暖かい、夏涼しい」を決める性能です。この連載でご紹介してきたパッシブデザインのレベルがこの性能を決めると考えて問題ありません。

劣化対策性能は、水・シロアリ・紫外線などによる建物の劣化を防ぐために行う対策に関する性能です。

この3大基本性能が一定に備わっていなければ、大きな問題や大きな不満が生じます。新築するときはもちろん、一定規模以上のリフォームを行う際には何より重要な項目になるということです。だから私は「本質改善型リフォーム」という発想を持つことが不可欠だと考えるわけです。

しかし厄介なことに、この項目(分野)は一般の人には理解しにくい専門性の高い内容になります。だから「これはこういうことです」と業者に言われたら、それがたとえ間違っていたとしても、間違っているという判断をするのはなかなかに困難です。また実際、悪徳リフォーム会社と呼ばれるような会社は別にしても、建築のプロの中でも、この3大基本性能をしっかり理解できている人は残念ながら多くはありません。ものすごくバラツキがあります。

いまの新築住宅の多くは、設計さえすれば(プランだけつくれば)、あとは別の会社(骨組みの木材を加工する会社がほとんど)が木の組み方や構造性能などを決めてくれるような仕組みになっています。だから工務店や設計事務所は木の組み方や構造性能などを理解していなくても家は建てられるのです。

また温熱(暖涼)性能についても「これくらい断熱しておけばいいだろう」という意識のプロがほとんどですし、断熱材の入れ方や気密の取り方(隙間をなくす工事の方法)についても十分な知識や技術を持っているところは多くありません。既存住宅(リフォームしようとする家)は断熱材をきちんと入れたり、気密を取るのが難しく、根本的な理解や工事経験の多さがモノを言います。

劣化対策性能については、リフォームしようとする家が傷んでいたとき、その原因をつきとめて取り除く必要がありますし、リフォーム後に劣化しにくい工夫をすることも必要になります。新築を建てる場合は「劣化しにくい工夫」だけの対応で十分なのですが、リフォームでは「劣化の原因分析」「原因を取り除く適切な処置の判断」が求められます。この違いは非常に大きいものです。

 

本質改善型リフォームができる会社

ここまで述べてきたように、建物においてもっとも重要な「構造性能」「温熱環境(暖涼)性能」「劣化対策性能」に対するプロの知識・理解・経験には相当なバラツキがあり、しかもその内容が専門的であるため、どんな会社を選んだらよいかの判断がとても難しいという問題があります。

その判断を行うために大きく参考になるのは「ホームページやパンフレットなどの表現物に3大性能のことを書いているか?」というところだと思います。こうしたことをきちんと考えている会社であれば、そのほとんどがそうした表現をし、説明のための資料をつくっています。ホームページや会社のパンフレットを見ても書いていない、「構造性能」「温熱環境(暖涼)性能」「劣化対策性能」を説明する資料がまったく用意されていないというような会社は本質改善型リフォームをしっかりやってもらう信頼性が薄いと思います。

 

野池さんのこと  住まいと環境社

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Posted by sample5 2017/07/09/日 07:18 pm Category:野池コラム