2018.05.05.土 好きと上手と情熱

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4年前、築30年の家を譲り受けリフォームのモデルハウス「育暮家むぱす」を建築していました。

完成間近、床の養生を剥がすと杉の床に深い傷がついていました。

すると1人の若い大工さんが「かえでの葉を埋め込ませてもらっていいですか?」と

補修の提案がありました。「カエデ?どんなふうにするの?」

「かえでの葉をのみで彫って埋め木するんだけど」「ん・・・」

「これを埋め込むんだけど」とカエデを型とった木片を見せてくれました。

「それいいね。やってください」と言ったものの半信半疑。

そして翌日、「どうですか」

「おー、すごいね。」杉の床にはカエデのほかにひょうたんもありました。

 

大工さんは伝統技術は学んで、習ってやってみて、経験積んで、また学んで努力と才能で

一人前に成長していきます。

でも、この埋め木作業はちょっと違うと思うのです。

ちっちゃな作業(手技)だけどそこには、好き、根気、情熱、美意識、誇りそしてセンスと器用さが必要です。

特に「好きこそ物の上手なれ」がなければ生まれないかえで(手技)だと思いました。

「好きこそ物の上手なれ」これは家の新築、リフォームの現場ではとっても大事な要素だと思います。

家づくりが好きは、手づくりの現場には欠かせません。

ただ最近の効率を求めらる家づくりの現場では育ちにくい光景です。言い換えれば余分なことにもなります。

それだけに今日ではそれを評価していただけるすまい手さんの存在と

私達つくり手との意思疎通(価値共有)の中でしか存在できないのかもしれません。

 

「ありがとう。なんかとっても育暮家らしい床になったよね」

みんなの心が温かくなりました。

その若い大工さんとは箱根の古民家改修の仕事も泊りがけでやりました。

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江戸末期からの民家の柱は傷みがひどいものがありました。手技の補修が必要です。

ここにもその大工さんの「上手」が活かされました。

育暮家むぱすの床に埋め込まれたカエデと同じように柱がぴったりとつながれています。

 

先日早朝、悲しい知らせが届きました。

それはあの若い大工さんの同僚からの連絡でした。「〇君がなくなりました」「え、」

志をともにし、これから育暮家の家づくりを成長させていこうと機会あるごとに話していたのに。

大きなショックでした。

「この本借りていいですか」

育暮家の事務所に来ると決まって本を借りていく。そんな若き大工さんが永眠されました

近年、家づくりの工法や仕様、価値観が多様化する中、職人さんたちも翻弄させられて来ました。

私達も正しい選択、決断をしてきたとはいえない部分もあります。

これから職人さんがさらに少なくなることが予測され、家づくりの工業化が一層進みます。

変化への対応は様々な形で進めなければなりませんし、工業化も否定するものではありません。

AIの登場で新しい住まいの価値が育まれるかもしれません。

でも、「好きと上手と情熱」が活かせる場を失うことは寂しいと思うのです。

 

育暮家むぱすの床に残していってくれたかえでは私達の道しるべになりました。

世代を越えて家づくりの変化についていかなくてはなりません。

何かにつまづきそうになったとき、床に残された手技が答えを示してくれそうな気がするのです。

 

出会いから10年、本当にこれまでありがとうございました。

これからもきっと「好きと上手と情熱」を共にできる友は現れますよね。そして

新しい「かえで」をたくさん増やしていきたいです。見ていてください。

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Posted by sample5 2018/05/05/土 03:44 pm Category:社長のfoot-path